正解のない海を、子どもと進む『原始的占星航海術 ~小乗~』
- kobetsusentakusen
- 7月15日
- 読了時間: 8分
更新日:21 時間前

<はじめに:正解のない海を、子どもと進む>
子育てや教育は、まるで地図のない海を旅する航海のようです。
私自身、日々変わる子どもの機嫌や葛藤と向き合いながら、「これで合っているのかな」と、夜ふっと不安になる瞬間があります。
そんなとき、私がある音楽から受け取った「真っ直ぐな言葉」が、いま懸命に子どもと向き合っている皆様への、小さなお守りになるかもしれない、そう思って、この記事を書いています。
今回紹介するのは、『原始的占星航海術 ~小乗~』(作曲:DJ BAKU/akira kawasaki、作詩:志人)という楽曲です。
一見、壮大で少し近寄りがたく感じるかもしれません。
しかし、現場で子どもたちを見つめる一人の大人として、何度も繰り返し聴いていると、ここには「次の世代(子どもたち)に、私たちは何を遺せるか」という、泥臭くも温かいメッセージが詰まっていることに気づかされました。
私自身も、子どもたちと一緒に日々迷い、学んでいる一人の大人です。
皆様と一緒に、この言葉の海を等身大の目線で泳いでみたいと思います。
<1. 日常に潜む「行キ止マリ」と「諦め」の正体>

何時ノ間ニカニ行キ止マリニ成りガチナ某 二度書キハ許サレヌ人ノ命モ虫ノ命 詰ラレレド諦メズニ匙投ゲズニ書キ溜メル
教育の現場にいても感じますが、今の子どもたちも、そして大人の私たちも、日々の忙しさに追われているとふと心がカサカサになる瞬間があります。
歌詞にある「忙シサニ聞キ逃シタ四季ノ間ニ間ニ」という言葉の通り、大切な変化を見落としてしまいそうになるのです。
じつは、心理学の世界には「停滞(Stagnation=スタグネーション)」という言葉があるそうです。(私も今回の記事を書くにあたって初めて知った専門用語です!)
これは、心が自分の内側に閉じこもってしまい、「どうせ私なんて」「がんばっても意味がない」と、未来への希望を失って動きが止まってしまう状態を指します。
歌詞にある「諦メト云フ名ノ終身刑」というフレーズは、まさにこの「停滞」の苦しさを言い表している気がしてハッとさせられます。
子どもが「どうせ無理」と匙を投げそうになったとき。
あるいは大人自身が「もう疲れた」と投げ出したくなったとき。
この曲は、上から目線で「がんばれ」と突き放すのではなく、「詰まってもいい、諦めずに、一度きりの命のノートに続きを書き溜めよう」と、同じ目線でそっと肩を叩いてくれるのです。
📝 塾長メモ「停滞(スタグネーション)」 心理学の言葉で、「自分の殻に閉じこもり、未来への希望やエネルギーが切れて心が止まってしまった状態」のこと。
<2. 「実はこれ、最近知ったのですが…」二つの魔法の言葉>
この曲が描く「迷いながらも進む航海」を、現場での子どもたちとの関わりや、ご家庭での日々に落とし込むために、私が最近学んで「なるほど!」と膝を打った2つのアプローチをご紹介します。
専門用語ですが、中身はとてもシンプルです。
① ナラティブ・アプローチ(物語の書き換え)

人は誰しも、自分の人生という「物語(ナラティブ)」の主人公です。子どもが「どうせ自分はダメなんだ」というネガティブな物語に囚われているとき、周りの大人はどう並走できるでしょうか。
歌詞にある「二度書きは許されない」という言葉は、重く聞こえますが、裏を返せば「今ここから、どんな続きのストーリーも自分で新しく書いていける」ということでもあります。
「じゃあ、明日はどんなページにしようか?」と、これからの物語を一緒に面白がって考えていく。
答えを教える指導者ではなく、対等な「人生の共同編集者」のようなスタンスが、子どもの心を「停滞」から救い出すのかもしれません。
📝 塾長メモ「ナラティブ・アプローチ」 人が語る「自分の人生のストーリー(物語)」に耳を傾け、その捉え方を新しく書き換えていく対話の方法。
② ミーム(文化的遺伝子)のバトン

生物としての遺伝子(DNA)だけでなく、私たちが使う言葉、大切にしている価値観、ちょっとしたユーモアなども、一種の遺伝子のように子どもへ引き継がれていくそうです。
誰モ傷ツケル事ノ無イ鋼ノ言ノ葉ト音ノ波動ヲ放テ
私たち大人が家庭や教室で放つ言葉は、良くも悪くも子どもに染み込み、次の世代へと受け継がれます。
「誰も傷つけない、でも芯のある強い言葉(=鋼の言ノ葉)」を、私たち自身が日常の中で使えているだろうか。
そんな、心地よい緊張感をこの曲は与えてくれます。
📝 塾長メモ「ミーム」 生物的な遺伝子(ジーン)に対して、言葉や文化、価値観など「人から人へ、時代を超えてコピーされ、受け継がれていく文化的遺伝子」のこと。
<3. 「すべては、これから生まれてくる子どものために」>

何時カハ土ニ還ル 仮暮ラシノ大地ニ楽器ヲ好キナダケ打チ鳴ラセ 音ヲ奏デ元ヲ正セ 全テハ是ヨリ産マレ来ル子供等ノ未来ノ為ニ
曲の終盤、世界観は一気に未来へと開かれます。
心理学では、大人が自分のエゴを離れて「次世代のために何かを残したい、育てたい」と願う成熟した心を「ジェネラティビティ(世代継承性)」と呼ぶそうです。
でも、難しく考える必要はありません。
「子どもの未来のために」といって、大人が自分の人生を犠牲にして、眉間にシワを寄せて完璧な教育をしなきゃいけない、ということでは絶対にないのだと思います。
歌詞には「楽器を好きなだけ打ち鳴らせ」「高貴なまでに陽気な剽軽(ひょうきん)さで」という言葉が出てきます。
大人自身が、この「仮暮らしの大地(日常)」を、等身大で、陽気に、おもしろおかしく生き抜いてみせること、多少の失敗も許し合える空気を作ること。
大人が楽しそうに生きている背中こそが、子どもにとって「この世界は生きていくに値する場所なんだ」「大人になるのって、結構面白そうだな」という、何よりの教育になるのではないでしょうか。
📝 塾長メモ「ジェネラティビティ(世代継承性)」 自分の利益だけでなく「次の世代を育み、より良い未来をバトンタッチしたい」と願う、成熟した心理的欲求のこと。
<4. 気取らず、真っ直ぐ、地を這うように>

日ノ丸ノ元ニ集イテ地ヲ這ウ様ニシテ 気取ラズニ広ガル真ッ直グナ詩ヲ書ク
子どもたちと日々向き合う私自身も、自分の人生の航海に迷う一人の人間にすぎません。
だからこそ、子どもに対して「上から教える」のではなく、「地を這うように、気取らず、真っ直ぐに」、共に悩み、共に喜ぶ存在でありたいと思っています。
『原始的占星航海術 ~小乗~』という激しくも優しい航海術(リリック)は、今日も慌ただしい日常を、一生懸命に生きる大人の私たちに、「星(=大切にしたい北極星のような価値観)を見失わずに、ボチボチいこう」と、等身大の勇気をくれている気がします。
みなさんは今、目の前のお子さんとどんな海を渡ってるでしょうか。
教育の現場に立つ一人として、皆さんそれぞれの航海が、少しでも穏やかな追い風に恵まれることを願っています。
<あとがき:言葉を差し出す距離、そして「見えない仲間」のこと>

最後に、少しだけ私の個人的な所感を。
理想論を語ること、あるいはそれを言葉にして発信することには、少しの照れ臭さや難しさが伴います。
今回の記事も、一歩間違えれば「大人のあるべき論」の押し付けになってしまうのではないかという葛藤が、私の中にずっとありました。
大人としての価値観を子どもや誰かに押し付けるのは、この曲の持つ優しさとは違う気がしたからです。
それでも今回、この記事を書こうと思ったのは、理想を言葉にすること自体に大きな意味があるとしみじみ感じたからです。
こちらも最近知った言葉なのですが、「想像の共同体」という概念があるそうです。
本来は国家の成り立ちなどを説明する言葉ですが、私は読書や音楽の体験にも同じことが言えるのではないかと思っています。
私たちの多くは、この曲を作った DJ BAKU さんや akira kawasaki さん、志人さんに直接会ったことはありません。
この記事を読んでくださっているあなたとも、すれ違ったことすらないかもしれません。
けれど、この『原始的占星航海術』という音楽を媒介にして、「世界のどこかに、同じように悩みながら、それでも未来の子どもたちのために真っ直ぐ生きようとしている大人がいる」という事実を、私たちは確かに感じ取ることができます。
私もまた、その「見えない仲間」の一人でありたいと思っています。
📝 塾長メモ「想像の共同体」 政治学の言葉で、「直接会ったことはなくても、同じ言葉やメディア(音楽や本)を通じて、確かにつながっていると信じ合える見えない仲間」のこと。
ぜひ、この熱量あふれるトラックと言葉の波動を、実際の音と共に体感してみてください。楽曲は各配信サービスで公開されています。 Apple Musicで聴く場合は以下のリンクから↓
正解のない海を、子どもと進む。『原始的占星航海術 ~小乗~』がくれた航海術
正解のない海を、子どもと進む。『原始的占星航海術 ~小乗~』がくれた航海術
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