私は毎日、卵を盗んでいる。――「効率化」と「楽しさ」のあいだ(ロブロックス 卵を盗む)

<小学生の一言と、大人のどハマり>
「先生、ロブロックスで卵盗もうぜ!」
塾に通う小学生にそう勧められたのが、すべての始まりでした。
今回教えてもらったのは、Roblox(ロブロックス)内の人気ゲーム「卵を盗む(Steal An Egg)」です。
最初は「卵を盗む……? 一体どんなゲームなんだ?」と半信半疑だったのですが、実際にプレイしてみると……これが驚くほど面白いのです。

ゲームの仕組みは非常にシンプルです。
エリアにある卵を盗む
敵に捕まらないように自分の基地へ持ち帰る
孵化させてペットを配置し、自動でお金を稼ぐ
稼いだお金で自分の移動速度(スピード)を鍛える
さらに足が速くなり、より遠くのレアな卵を盗みに行く
気づけば私は毎日、画面の中で必死に卵を盗み、ランニングマシンでスピードを鍛える日々を送っていました。
大人が小学生にゲームを教わり、本気でハマってしまうという、少々シュールな構図です。
<なぜこのゲームは、これほど人を引きつけるのか?>
2026年秋現在、「卵を盗む」はRobloxの中でも非常に多くのプレイヤーを集めているゲームの一つです。
改めて遊んでみると、そこには、ついつい夢中になってしまう見事な仕組みがありました。
「あと少しお金を溜めれば、スピードが上がる」
「スピードが上がれば、今まで行けなかったエリアに行ける」
「新しいエリアに行けば、見たこともない卵に出会える」
とにかく「成長」と「次の目標」が常に目に見える形で示され続けるのです。

さらに面白いのは、「自分で少しずつ積み上げていけるスピードや基地」と、「どんな卵に出会い、それを盗めることができるかという偶然性」が絶妙に交差している点です。
「欲しいものを探して、取りに行き、逃げ切って持ち帰る」という短くスリリングな冒険が毎回挟まるため、単なる作業ゲームにならず、ついつい「もう一回」と画面に向かってしまうのです。
<「未知」が「予測可能」に変わるとき>

ところが、そんな工夫が凝らされたゲームであっても、プレイを重ねて仕様を理解してくると、だんだんと自分の頭の中が変化していきます。
「この卵は盗まなくて大丈夫だな」
「このペットは持っていても仕方ないから売却しよう」
気づけば、ゲームを純粋に楽しむというよりも、「最適化された作業」としてこなすようになっていたのです。
もちろん、効率を追求すること自体が悪いわけではありません。
「最速ルートを見つける」「無駄を削ぎ落す」という工夫自体も、ゲームの大きな醍醐味の一つです。
ただ、世界がすべて「予測可能」になり、効率だけを求めるようになった瞬間、最初に感じていた「何が起こるんだろう?」という未知へのワクワク感が、少しずつ薄れていくのもまた事実でした。
<スピードを上げると、新しいエリアに行けるように>

この体験を通して、ふと日々の勉強のことが頭に浮かびました。
ゲームで「スピード」を鍛えると、今まで行けなかった遠くのエリアに足を踏み入れられるようになります。
勉強も、どこかそれに似ているのかもしれません。
最初は「え? なんでこうなるの?」という未知の問いから始まり、基礎を鍛えて理解できるようになると、それまで読めなかった文章の意味が分かったり、解けなかった問題が解けるようになります。
自分の「スピード(基礎力)」が上がることで、今まで見えなかった新しい世界(問題や知識)へアクセスできるようになる。
もしかすると、学ぶことの楽しさの一つは、そうやって「できることが増え、見える世界が少しずつ広がっていくプロセス」そのものにあるのかもしれません。
しかし、「テストで点数を取るための最適化された作業」ばかりに偏ってしまうと、その「新しいエリアへ踏み出す楽しさ」が置き去りになってしまうのかもしれません。
<教わる側になって見えた、「共有」の面白さ>
では、少し作業感が出てきたゲームを、なぜ私(そして子どもたち)は今も続けたくなるのでしょうか。
実は、今回もう一つ非常に面白い発見がありました。
それは、このゲームを通して「子どもと大人の立場が完全に逆転した」ということです。
普段の塾では、当然ながら講師・大人が「教える側」にいます。
しかしRobloxの世界に入った瞬間、その関係は一変します。
「先生、それ知らないの?」
「こっち行ったほうがいいよ!」
「その卵、結構レアだよ!」
ここでは子どもたちが「先生」であり、私は完全な初心者です。
単にゲームの成果を報告し合うだけでなく、子どもたちが自分の大好きな世界へ大人を招待し、誇らしげに教えてくれる時間がそこにありました。
そして恥ずかしながら、大人の私自身も「こんなレアが出たよ!」「スピードがここまで上がったよ!」と子どもたちに話したくてゲームを開いている自分に気づいたのです。
初心者なら「初めて卵を持ち帰れたこと」、上級者なら「滅多に出ない激レアを出したこと」。
自分が知っている世界を教え、自分の小さな進歩や変化を誰かに話して受け止めてもらえる環境があること。
効率や成果そのもの以上に、「自分の変化を誰かに話せる」「それを一緒に面白がってくれる人がいる」という共有の場こそが、次の挑戦に向かうための大きなエネルギーになっているのだと感じます。
<学びの楽しさを、もう一度考えてみる>
ゲームと勉強は、一見すると対極にあるように思えます。
しかし、「人はどのような時に夢中になり、何をきっかけに前へ進みたくなるのか」を観察してみると、そこにはたくさんの共通点が見えてきます。
効率の良い勉強法を教えること?
成長が目に見える小さな目標を用意すること?
それとも、教える・教えられるの枠を超えて「今日こんなことができたよ」と話せる場所をつくること?
たぶん、答えは一つではありません。
こうした要素が少しずつ重なり合うことで、「もう少し先へ進んでみよう」と思えるのかもしれません。
……と、それらしい考察をまとめたところで、今日も私は子どもたちに「今日の進捗」を報告するために、画面の中で卵を盗みに行くのでした。
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